「さぁ、どうぞ」

お店のドアを開け、爽やかな笑顔で中に入るよう促しているイケメン男性。

ついて来て今更だが、ずぶれの自分の格好が申し訳なく入り口で躊躇っていた。

「…待ってて」

お店の奥から戻ってきた男性は、濡れた私の頭にフェイスタオルを被せ、濡れた髪を拭いてくれる腕には、黒いシャツとズボンをかけて持っていた。

「お店の制服で申し訳ないけど、着替える?」

「でも…」

申し訳ないです。

「風邪ひいちゃうよ」

その瞬間

「クシュン」

「ほら!トイレで申し訳ないけど、そこで着替えておいで」

「…すみません。おかりします」

トイレに入って、体に張りついた服に手間取りながらなんとか脱ぐが、体はベタベタと濡れている。

貸してもらったフェスタオルで体を拭いて、シャツとズボンに着替えたら、鏡に映る自分を見た。

彼に(もう元だけど)会う為にお洒落したのに、髪はビショビショ、メイクは剥げてる。

そして、お気に入りのワンピースも、グッショリと濡れている様に、ため息をひとつ吐いた。

ワンピースを洗面器の上で絞っていたら、脳裏を過ぎる彼の言葉がチラつき、自然と涙が出てポタポタと落ちる粒が絞ってる服を濡らす。