ワォ…予想外のメニューに頬に両手をそえて喜んだ。
「おいしそう…いただきます」
「どーぞ」と、アイス烏龍茶も置いて離れるのかと思ったら、カウンターに頬杖をついて、目の前でニコニコと私が食事する姿を見ているのだ。
神崎さん…食べにくいです。
後ろからの恐ろしい視線にビクつきながら、味わう余裕もなく、なんとか食べ終わると、なぜか頭を撫でながらプレートを下げて『ブレンドだったよね』と食後のコーヒーを出してくれた。
もう、後ろの女性達は、私が彼女だと勘違いしている様子が明らかで、次々と帰って行く。
その度に神崎さんは、爽やかな笑顔で「また来てね」と罪なことを言っているのだ。
そして、またお客は私だけになる。
「クローズしていいよ」
8時10分前ぐらいに奏多くんにcloseの看板を出させて「あがっていいよ」と彼を帰らせようとした。
「遅くまですみません。私も帰ります」
「えっ、ゆっくりしていってよ。まだ話してないよ」
「えっ?」
「約束したでしょ?」
一瞬なんのことか思いつきもしなかった。
「お先に失礼します」と奏多くんが声をかけて裏から出て行った。
すると、2人きりになり、なんだか、落ち着かない。



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