次に目を開けた時、さっき置かれたはずの食事は片付けられていた。
今何時……?
体を起こして時計を確認しようとすると、身体中汗をかいていることに気づいた。
そして時計は午後5時を指す。
もう夕方……。回診!?
と気付くが早いか、部屋の扉が開くのが早いから。
『回診でーす。』
今朝とは違う看護さんが元気よく入ってきた。
『はい、体温計。
チェック表はあるかな?』
いつものように体温計を受け取りながら、今朝渡されたチェック表を渡す。
「あっ!?」
書いてない。
と冷や汗なのか額の汗を拭っていると、梶田先生がやってきた。
『排便してない?』
チェック表を見た梶田先生が私に聞く。
「いえ、書き忘れてしまって……。」
下痢に加えて血が出たなんて……言えない。
『分かったよ。体温は?』
ちょうど鳴っている体温計を梶田先生に渡す。
『ちょっと熱あるね。』
そう言うと私の額に大きな手が……
ぇっ!?
医者としてやってることは分かってるけど。
今朝と同様に反射的に、梶田先生の手を退けようとする。
でも動かない…。大人の男性って、力強い…。
『そしたら聴診させてね。』
手際の良い聴診。
『ちょっと押すからねっ。』
と、梶田先生が私のお腹を押すと同時にっ!
「いったい!!!」
うぅ……。この痛み……。
あの時と一緒……。涙が出るくらい痛い。
『そうだよね、いつから?』
痛かった訳ではなくて……その……。
えっと……。
『薬も新しいものだから、その副作用の可能性もあるよ。だから隠さないで、ちゃんと教えて。』
私の目を見たままの梶田先生。
恥ずかしくて顔を上げられない……。
『今日出たっていう便は、どんな状態だった?』
もうバレてる……。
「下痢……。」
『他に変わったことは?』
口調が強くなる梶田先生。追い討ちをかけられているみたいで、涙出そう…。
「血が……」
『下血!?』
やっぱり驚くよね……。
梶田先生は立ち上がった。
『どのくらい?』
「たくさん……、」
最初に聞かれた時にすぐに言わなかった自分を責めた。すぐに言えば、お腹を押されることはなく、こんな痛みも出なかったのに。
『分かった。そしたら一度薬を前のものに替えよう。そして、これから検査行くからね。』
「えっ?ヤダ!」
『すぐにしないとダメだよ。』
だって、だって……。
お尻の中にカメラ入れるんだもん……。
いつか前にやられたことがあった。
こんなことなら死んでしまいたいと思うほど辛かった。
梶田先生はそんな私を置いていくかのように、看護師さんに指示を出して部屋を出て行った。
どうしよう……。