あの日、卓也と優紀ちゃんがセッティングしてくれたあの機会を逃す訳には行かなかった

紗也が結婚することだってわかってる

それでも、もう離したくなかった
情けなくても縋り付くしかなかったんだ


「紗也が結婚するのも聞いてる
それでも、俺は諦めたくないんだ」

「けっ、こん?」


紗也は俺が知っているとは思わなかったのか驚き声を上げた
そんな、顔さえも愛しくて可愛くて触れたくなる手をそっと押さえた


「え?あの…………」

「この1年、ずっと紗也を思い続けていた
あの日、別れたことをずっと後悔した
でも、格好悪いとこ見せたくなくて………
縋ることも、もう一度話をしてほしいとも言えなかったんだ」

「恭介さん………」

「紗也にそうやって名前で呼ばれる事が好きだった
紗也に呼ばれる名前が好きになった
触れたいのも抱きたいのも紗也だけだ」


必死だった
付き合っている時も気持ちは拙いながらにも伝えてきたつもりだ

それでも、今まで見せたことのない紗也への執着
でも、こんなの一部にしか過ぎない
紗也が戻って来てくれるなら何度だって言ってやる


「一年間女性には見向きもしなかった
このまま、紗也と別れていたら七年はあっという間に更新されて新記録だな」


紗也と付き合う前の七年は全く女気は無かった

それ以前もセックスに積極的ではなかった自分
淡白だった