「恭介さん、急がないでください」

「紗也」

「私はこれからも傍にいるから
あの、恥ずかしいけど、これから何度でも………」

「あ、いや、あ、そうだよな…………嬉しくて
俺、年甲斐もなくがっついて
紗也、身体は大丈夫か?無理させたな」


恭介さんは戸惑いながら優しく頭を撫でてくれる
やっぱり、この手だ

原田部長でもない、優紀や卓也さんの手でもない
私は一年間ずっとこの手を待っていたんだ

自分から別れを言ったくせに情けない
卑怯だよね
それでも、もう離したくない


「恭介さん、ごめんなさい」

「え?」

「私………」

「ちょ、ちょっと待って!
やっぱり、付き合えないとか?
昨日何度もしつこかったから?」

「え、」


恭介さんは慌てた様に言葉を繋げていく
私が謝りたいのは、あの日のこと
彼と別れた日のこと

本心ではない気持ちで自分に嘘をついて彼を傷つけたから


「いや、あの………」

「待って!何も言わないで!
紗也!」

「は、はい」


あまりの勢いに固まってしまう
恭介さんは、私の両肩に手を置いて見つめてきた

真っ直ぐな瞳
それは、何度も見たことがあった


想いを告げてくれる時の瞳だ
胸がキュンと高鳴った


「結婚しよう!いや、結婚してください!」

「え、けっこん?」


意味を理解して顔が真っ赤になったのがわかった
期待以上の言葉に舞い上がりそうになる