「紗也さん!結婚するって本当ですか?
仕事どうするんですか?」
うるうると瞳を潤わせる後輩のみなちゃん
可愛いなぁ、ほんと
「あ、」
「えー、真山さんそうなの?」
答えようとしたら、みなちゃんの声にパソコンに向かっていた人達も一斉にこちらを向いた
挙げ句に………
「原田部長と?」
「えー、そうなんですか?」
「あの話、マジだったんだ」
私なんてそっちのけで話が進んでいく
良くも悪くもノリの良い同僚たちに小さく溜め息を吐いた
否定も肯定もする間がない
きゃっきゃっと楽しそうに話をしている姿に今は水をささないでおこうと口を閉ざした
ブーブーとデスクの下に置いてある鞄から震えが伝わる
スマホを探しだし、その名前に頬が緩む
タップしてメッセージを開いて驚いた
今、どこかに隠れてる?
思わず辺りを見回してしまう
紗也、ちゃんと結婚するって皆に伝えてよ
もちろん、相手は俺だってことは忘れないで言ってね
彼からの分かりにくい小さな独占欲
これが、独占欲だったのだと知ったのはつい最近
「みなちゃん、あのね私、山野紗也になるの」
彼のメッセージに私はまんまと暴露
その言葉を聞いたのはみなちゃんだけじゃない
一緒にきゃっきゃっと楽しそうにしていた人が静かになってこちらを見てきた
うっ、なんか視線が
「山野………?」
「うん」
瞬間、キャーッとまた賑やかになった