「二人ともありがとう」

「紗也………」
「紗也ちゃん……」

「恭介、二人でちゃんと話をしてお互い前に進めよ」


卓也がポンっと背中を叩いた
やっぱり気付いてたんだな


「俺達は帰るよ、紗也ちゃん、ちゃんと話を聞いてやって」
卓也は少し辛そうに声を震わせた


「卓也さん、ありがとう」


二人は紗也の頭をポンポンと撫でて
「恭介の話聞いてやって」「私はずっと紗也の味方だよ」そう言って店を出て行った

あぁ、もう俺の手は必要ないのかも知れない
それでも、二人から貰ったチャンスだ
最後の…………



「紗也、久しぶり」

「久しぶり、座っていい?」

「あぁ、」


ゆっくりと前に座った
色々なものが沸き上がってくる
何度もこうやって食事をした
目の前で食べる彼女が可愛くて、ずっと見ていたいと思っていた


「紗也…………」

「え、」


俯いていた顔を上げた紗也と初めて視線があった

どうして、俺は…………
こんなに真っ直ぐな瞳から逃げたのだろうか
余裕ぶって
大人ぶって
別れを受け入れて

どうして「嫌だ!」と情けなくても追いかけなかったのだろうか


「再会してすぐだけど、我慢できない
もう、後悔したくないから言わせて
俺はずっと紗也の事忘れたことなんてなかった
あの日、言った言葉に嘘はない
そして、それは今でも………
今日会って確信した」

「恭介さん…………」

「紗也、俺と今度は結婚前提に付き合って欲しい
俺は紗也を愛してるんだ」