流石の卓也も俺がまだ未練があるとは言っても結婚が決まっている紗也に俺と会わすような事は出来ないだろう


日本に戻ったらまた、飲もうと卓也と別れて
ニューヨークに戻ってからも何だかやる気が出なかった
どこかで紗也も同じ気持ちだと思っていたのだろうか


そんな中でやっと日本に戻ってきた


1年
ニューヨークでがむしゃらに働いた
紗也のいない寂しさを拭うために

他の女にも興味がなかった
靡かない俺に周りは同性愛者ではないかと噂していた
噂を耳にしたときは驚いたが特に否定もしなかった



スマホが着信を示していた
卓也だ


「恭介、悪い!仕事中に!用件だけ!
金曜日、お帰り会するからな!
いつもの店で!」


俺の返事も聞かずに切ってしまった
俺は一言も発せず


「山野くん…………」


突然鳴って、突然切れた携帯を眺めていると、不意に声を掛けられた
振り向けば、同期の女が立っていた
少し驚き、ばつが悪そうに………

あの日、俺のベッドで寝ていた女だ


確か、高原だったか………
ふと、自分がどれほど他人に興味が無いかを思い知った

同期として10年以上も一緒に仕事している中間なのに
名前さえも曖昧だ


「戻ってきたんだね」

「あぁ、」

「あ、あの、山野くん!あの時は………」

「いいから、何も言わないでいい
罪悪感を感じる必要もないから」


俺たちが別れたのは誰のせいでもない
自分たちで決めたんだ