「そっか………」


あぁ、こいつもいいヤツだ
何も聞かない
何も言わない

きっと俺の情けない気持ちもわかってる


「たまには日本に戻るんだろ?」

「あぁ、」

「そんときは絶対声かけろよ!
飲みに行こうぜ」

「そうだな」

「ニューヨークの金髪美女の話とか聞かせろよな!」

「あればな」


そんなの無いのは卓也が一番わかってるはず
それでも言葉にするのは、激励


「…………じゃーな!」

「卓也…………ありがとな」


付き合いは高校からだけどいつも卓也の周りには人が集まっていた
もちろん、モテたし彼女もいたはずだ

でも、どこか俺と同じで夢中になれないでいた
流石に俺の様に7年も女を抱かないなんて事はなかった
社会人になっても、彼女の存在はあった


あいつも、優紀ちゃんに出会って変わった
「嫉妬も、愛しい感情も全部優紀が教えてくれた」
そう言った卓也は心底幸せそうだった
そして、俺も


音がなくなったスマホをベッドに放り投げ自分もダイブする

忘れることなんて出来るのだろうか
いつか、紗也とのことも思い出に出来るのだろうか


今はダメだ
身体中が紗也を覚えている

目を閉じれば、ふわりと優しい笑顔が浮かんでくる
クスクスと笑う顔が好きだった
「恭介さん」と呼ぶ声が大好きだった


「つっ、」


胸に込み上げてくる物を押さえきれなかった
じわじわと濡れていく枕
誰も見ていない


今日だけ………