卓也さんからすれば、親友を傷付けた女だ
それなのに、私を攻めることもなく一年間優紀と一緒に何も言わずに待っててくれたんだ


「卓也さん、ありがとう」


ポンポンと頭を撫でたのは卓也さんと優紀
撫でて「恭介の話聞いてやって」「私はずっと紗也の味方だよ」そう言って店を出て行った
二人の優しさに涙が滲んでくる


それでも、私が望んでいるのは違うんだ
原田部長の手でも
優紀や卓也さんの手でもない

今目の前にいる彼の手だ
もう二度と彼に触れてもらえなくても…………


「紗也、久しぶり」

「久しぶり、座っていい?」

「あぁ、」


私はゆっくりと落ち着かせるように彼の前に座った
今更ながらに緊張してきた


「紗也…………」

「え、」


緊張で俯いていた顔を上げると泣き出しそうな彼
そんな顔は一度も見たことがなかった
いつも彼は余裕で、大人で


「再会してすぐだけど、我慢できない
もう、後悔したくないから言わせて
俺はずっと紗也の事忘れたことなんてなかった
あの日、言った言葉に嘘はない
そして、それは今でも………
今日会って確信した」

「恭介さん…………」

「紗也、俺と今度は結婚前提に付き合って欲しい
俺は紗也を愛してるんだ」


甘い告白に私の全身は疼いた

無口で不器用で気持ちを伝えるなんて苦手な恭介さん
でも、いつも肝心な時はきちんと伝えてくれる
初めて会った時もそうだった


真っ直ぐな気持ちに私は抗う事は出来るはずないんだ