そして何より
気付かされた
1年経って、今更………


「私はまだ、彼が好きです」


忘れる為に新しい恋なんて無理だ
こんなに素敵な部長が想ってくれているのに

私は撫でられる手も忘れていない
ここに居ることを確かめるように撫でる手が好きだった


「だったら、紗也ちゃん
ちゃんと彼に伝えろ
そうじゃないと、俺、嫌われる覚悟で紗也ちゃんをモノにするよ」

「部長…………」


部長は最後まで部長だ
やっぱり、尊敬する大好きな人


「紗也ちゃん、わかった?」

「…………はい」

「よし、じゃあさ飲もう?
あとさ、一つだけお願い聞いてよ」

「え、」

「名前で呼んでよ
部長は嫌だし、原田さんもなしね」

「えっと、」


それは、下の名前で呼べと?
もちろん、上司の名前は知ってる


「振られた俺からの最後のお願い」


部長はきっと、空気を変えようとしてくれてるんだ
そして、私の背中を押してくれてる


「将太さん」

「……………っっ!はぁー、いいな、それ」


部長はテーブルに突っ伏した
「諦めるのやめよかな、いっそ無理やり」そんな声が聞こえてきて「部長!」と怒ると
やっぱり、いつもの様に笑ってた


「将太さん、飲みましょう
私の背中しっかり押してください」

「くそっ、紗也ちゃんには負けたよ
上司として部下の恋を応援するよ」


ポンポンとまた頭を撫でられた
それは、いつもの「頑張れ」だった