思いっきり泣き叫びたい
でも、出来なかった


優紀にも涙を見せずにただ俯いていた
何も聞かない優紀の優しさに私は甘えてる


「卓也さんに怒られちゃうね」


涙声で精一杯伝えると「あんたが幸せになったら良いのよ」と優紀も少し涙声だった


幸せになれるのかな?
恭介さんと過ごした日々より幸せなんてあるのかな?


今はまだ考えられない
まだ、体中に恭介さんの温もりが残ってる
いつか、ちゃんと優紀にも言うからね
待ってて





「紗也ちゃん、彼氏とは別れた?」


恒例になった原田部長からの、からかい
私が恭介さんと付き合っていた3年の間に原田さんは部長になっていた

会社始まって以来の最年少部長であり、スピード出世
それでも、彼は何も変わらなかった
そして、私たちが別れた時は部長は上海に
時折、日本に戻ってきて姿を見ていたけど話す機会はなかった

上海支部が起動にのり、部長として一回りも二回りも大きくなって戻ってきた
戻ってきた途端、これだ


「もうっ、部長!いい加減にしてください!」


私もいつもと変わらない返し
だけど、部長は瞳を瞬かせ驚いていた


「え?マジ?」

「え?」

「紗也ちゃん、今夜飲みに行くよ」

「え、あの、」


突然の誘いに戸惑った
急にどうしたの?

断ろうとしたけど部長はまさかの「上司命令だからな」そう言って立ち去った