「別れた~?」


優紀の驚いた様子とは裏腹に私はただ、冷静に頷いた
そんな私の様子に優紀は「そっか、」と何も言わない


何か聞かれても私には何も答えられない
どうして?と聞かれても今の私には説明できない
嫌いになったの?と聞かれても頷けない


ただ、私の毎日から恭介さんが居なくなった事実だけ


別れを告げた日、恭介さんの電話番号もアドレスも全て消してブロックした

会社は辞めることはできないけど、恭介さんが会社まで来ることはないだろう
円満な別れとは言えないけど、恭介さんもわかっている
優しい恭介さんは私のわがままを理解してくれた

それに恭介さんはもう、ニューヨークだ


暫く、いや、もう会うことはない


あ、でもいつか優紀と卓也さんとの結婚式には会うだろうな
悪友だと、なんだかんだ言いながらも友達思いの恭介さんだから
ニューヨークから飛んで来るだろう


その時には笑って会えるかな?

もしかしたら恭介さんも結婚してるかも知れない


「優紀は卓也さんと結婚の話はないの?」

「あんたが心配で結婚なんてしてられないわよ」


ぽんっと優紀がお酒を片手に私の頭を撫でた
その手が優しくて、私は恭介さんと別れてから初めて涙を流した

きっと優紀は気付いてて何度も頭を撫でてくれる