「紗也ちゃん、」

「はい」


ぎゅっと更に力が入って密着する
クスクスと笑い声が聞こえてきて、彼女の笑顔が思い浮かんで愛しさが溢れてくる


「紗也ちゃん」

「はい」

「紗也…………」

「…………はい」


心地いい彼女の名前
名前を呼ぶたびに愛しくてたまらない


「山野さん…………恭介さん…………
抱き締めてくれないんですか?」


俺はぎゅっと初めて彼女を抱き締めた
腕の中の彼女は小さくて潰れそうで


俺の想いを伝えたい
好きなんだ


「紗也、紗也、紗也、」


溢れてくる想い
優しく優しく大事に何度も名前を呼んだ
伝わってほしい


「恭介さん、好きです」


ぎゅーっとさらに強く抱き締めると「うっ」と小さな声に我に返った

久しぶり過ぎて加減がわからない
いや、こんな気持ちが初めてだからだ


今まで付き合ってきた彼女達にも感じたことのない感情


力を緩めて離れた温もりに寂しくなる
離れたことで、今日初めて目が合った
俺が言いたいのは一つだ


「紗也、好きだよ
俺と付き合って下さい」

「はい」


真っ直ぐな瞳とはっきりと聞こえた返事
たまらなくなり、眉間に皺が寄る

情けない顔を見せたくなくて隠すように引き寄せ、抱き締めた


「嬉しい、紗也、好きだよ」


触り心地が良さそうだと思っていた髪はふわふわしていて気持ちがいい
元木に触らせないで良かったな


俺たちの付き合いが始まった