「は?口説いてるってことは彼氏じゃないんでしょう?
口出さないでもらえますか?」


原田さんの珍しい口調
ハラハラしてしまう



「今日は俺が先約だからね、悪いけど連れていくよ
紗也ちゃん、行こう」


山野さんは私の手を取って歩き始めた

私は原田さんに振り返って「お疲れ様です!すみません、また、」と頭を下げた


「あんなヤツに愛想しないで」

「え?」


山野さんはピタッと足を止めて苛立ったように頭を掻いた
そんな姿が何だか愛しく思えて胸が苦しくもなる


出会ってから一ヶ月が過ぎた


私の心はすっかり山野さんに懐柔されてしまって
実は今日、ちゃんと気持ちを伝えようと思っていたのだ


「好きです」と


私がはっきりしなかった事で彼を苦しめてしまった
一ヶ月の間、彼は言葉少ないながらも想いを伝えてくれた

自惚れでもなく、想ってくれていると思う


「悪い、俺、情けない
あいつ、若いし性格も良さそうだし
俺みたいな6歳も歳上なんて、紗也ちゃんからしたらおじさんだし嫌だよな」


きゅっと胸が苦しくなる
私は、思わず山野さんに抱き付いた


「え、」


山野さんは突然の事に戸惑っている


「さ、紗也ちゃん?」


いつも、スマートで紳士な山野さんを困らせているのが私なんだと思うと何だか嬉しくなってしまう