「真山さん、ずっと気になってたんだ
付き合って欲しいんだけど」

「え?」

「今、彼氏いないって聞いたけど、違う?」

「あ、いえ………」

「だったら、俺と試しに付き合わない?
大事にするよ?」


会社からの帰り道、途中で「真山さん」と呼び止めたのは、社内でも人気のある営業部の原田さんだった
原田さんは26歳で、営業成績もよく近々主任に昇進すると専らの噂
爽やかな容姿に性格もいいと社内だけでなくクライアントからの評価も高い
そんな人が私に?

しかも、試しにってなに?


「えっと……「悪いけど今は俺が口説いてる最中だから遠慮してよ」」


原田さんと二人で声をする方を見れば、これまた、先日のコンパで知り合った山野さんだった


あれから、何度か連絡を取り合い食事をしたりしていて、所謂お友だちのお付き合いをしている
実は今日も約束していて向かっていたところだった


でも、待ち合わせ場所は駅
ここは、駅までの道中とはいえ駅まではまだ先だ


「山野さん、どうして……」

「今日は早く終わったから、会社からならこの道しかないし会えると思って
早く会いたかったんだ
タイミング良かったみたいだな」


ち、ちょっと、こんなとこで
しかも、原田さんの前で

クールな山野さんの甘い雰囲気は本当に恥ずかしい