「山野、もしかして…………そうかそうか!
あの山野が?そうかそうか!
山野なら仕方ないな俺もドンピシャなんだけど山野に譲るよ!」


元木は満面の笑みでバシバシと肩を容赦なく叩いて去って行った
ドンピシャってなんだよ


「だ、大丈夫ですか?」


肩を擦っていると顔を覗き込まれ、大きな瞳に思わず顔を逸らしてしまった

あ、と思った時には後悔
絶対、今の感じ悪いよな………

こんなことで動揺するなんて今時の高校生でももっとスマートだろう


「悪い、大丈夫だから」


聞こえるかどうかもわからない声
ほんと、情けない
目を合わせて言うことすら出来ないのだから


そのあとはちょくちょく声を掛けられながら彼女はそれなりに楽しんでいたように思う
俺からは全く話し掛けることが出来なかった

周りからすると無愛想な男の横に座った彼女を気遣ってくれたのだろう


「山野が行かないなら俺が本気だすよ
まじで紗也ちゃんタイプだから」


元木が俺だけに聞こえるように耳打ちしてきた
ドンピシャとはそう言うことだったのか

元木の目は真剣だ
茶化してるとかではなないのだろう


元木に譲る気は全くない
これで、会えなくなるかもしれない
こんな感情に悩みながらも、彼女ともう少し話をしたかった


会計を済まして、帰ろうとした時「真山さん」と声を掛けていた