この事実は、アルフォード様にとっては寝耳に水だったのだろうか。目を見開かせ、声をあげ、ここ一番で驚いている。
「もうすぐ誕生日って、どうしてそんな大事なことを早く言わないんだ!」
「え?あ、す、すみません!」
何故、アルフォード様がムキになっているのかは不明ですが、勢いにつられて取り敢えず謝ってしまった。
私も訊かれて気付いたのだ。
神殿の事件のことで、自分の誕生日にまでも頭が回ってなかったことは確かである。
(誕生日かぁ……)
それは、嬉しい思い出の日で、思い出すと顔が綻ぶ。
昨年は、聖女見習い仲間にささやかにお祝いしてもらった。
この日だけは特別で。みんな、少ない給金を出し合ってプレゼントを買ってくれたり。
ケーキやお菓子を食べて、みんなで笑い合って楽しいひと時を過ごした。
……なのに。
二ヶ月前の惨状が、あの恐ろしい場面が脳内に映し出される。みんなが倒れて毒に藻搔いていたあの光景を。
思い出すだけで、胸がギュッと苦しい。
みんな、今頃何をしているのだろうか。
命に別状はないと、お兄様は話していたけど……みんなは元気になったのだろうか。



