神殿勤めを続けていれば社交の必要性はほぼないので、デビュタントは何ら気にしなくてもいい話。

しかし、その神殿を追い出された私には『神託』を受ける事は出来ない。そして、残された肩書きは『伯爵令嬢』。

タンザナイト伯爵家は領地を持たず、神殿に仕える家門ではあるが、神殿を出た今、私の勤めは他家との繋がりを作ること。すなわち婚姻だ。

貴族令嬢として、社交界デビューしなければならない……?

まさか、そんなことが待ち受けていようとは……!

冤罪だの追放だので、今の私にはそんなことまで頭が回っていなかった。

侯爵令嬢のマーガレットお姐さまは聖女であるが、名家の生まれなので、神託を受け社交界デビューも両方していた。そんな例もある。

けど、まさかこの私がそのようなことで悩まされることになろうとは。

予期せぬ状況に真っ青となる。



「母はラヴィのデビュタントに騒いでいるけど……ラヴィは今いくつなの?」

「私ですか?もう少しで16歳になります」

「え?もう少しって……」

「あと十日ぐらいでしょうか」

「……えぇっ!」