あとはアルフォード様のお兄様であるランクルーザー様や私のお兄様の話ばかりだ。
……未だ、私が神殿を追い出されるきっかけとなった事件の話はしていない。アルフォード様も訊いてこない。
そして、アルフォード様の王都でのあの話も、ラベンダー畑で溢したあの日以来、騙られることはなかった。
「そういや、母が君は神殿勤めに明け暮れていたはずなのに、マナーに関しては完璧に近くて教えることがあまりないと感心していたよ」
「そ、それは恐れ入ります」
サルビア様からそんな評価を頂いていたとは、恐縮過ぎて反射的に頭を下げてしまう。
「どこで教わったの?」
「はい。侯爵家ご出身の筆頭聖女のお姐さまがいるのです。『貴女は一応、貴族令嬢だから』と、個人的にマナーは一通り教えて頂きました」
「侯爵家令嬢の筆頭聖女?」
「はい、マーガレットお姐さまです」
「マーガレット……ああ、ディランブル侯爵家の」
「はい!ランクルーザー様の」
「はは。そういうこと……しかし、兄上が家督を継がない理由が、侯爵家の一人娘と一緒になりたいがためだったとは」



