成人間近の淑女とあろうものが、手放しで喜んでしまった。
アルフォード様は単に、数ヶ月の居候で家族のようになってしまった情からくる親切の心で名前呼びを許しただけだというのに。
その先を期待するには畏れ多い。もしかしたら……なんて期待したいけど、次期公爵という有望株の美男子なんて、成人前の小娘には到底手が届かないだろう。
でも、喜びは隠せない。
浮かれ気分の私の横では、アルフォード様があっちの方向を見て何やらぶつぶつ呟いている。
「アルと呼んで貰うにはまだ早いか、けど……」
「え?何ですか?」
「……いや、何でもない」
本当、どうしましたか。
……こうしたアルフォード様とのお茶会は、実は今日が初めてではない。
アルフォード様が視察などで外出され、お菓子のお土産がある時に呼んで貰っているといったところ。有難いことです。
お菓子を頂きながら、お屋敷内での日々の出来事を話すのが主だが、たまに神殿の話もする。
とは言っても、アルフォード様が聖騎士を志して神殿に出入りしていた時のことや、私が神殿で過ごしていた日々のことを少し。



