表情もいつもの柔らかく甘い笑顔ではなく、ムスッとした、面白くなさげな様子だ。
そんなお顔も素敵……いやいや。これは、私。なんかマズイことを言ったのだろうか。ただ、ファビオの話をしただけなのに。
知らずのうちに公子様の気分を害してしまった。そんな事実が重くのしかかり、浮かれ気分が一転、真っ青だ。
ど、どうしよう。
「こ、公子様……?」
様子を伺いながら、恐る恐ると声をかける。すると、公子様はハッと我に返った様子だった。
「ご、ごめん。狭量で済まない」
「え?きょうりょ……」
「そこはあまり気にしないで。それよりも……その。前から思っていたんだけど。その」
「え、あ、はい」
「『公子様』って呼び方、重くない?……ここに来てもうだいぶ経つのだから、そろそろ気軽に名前で呼んでくれると有難いのだけど……ラヴィ」
「はっ……」
今、私の耳は確かだろうか。
公子様、いえ、アルフォード様が私のことを公爵様や皆さんと同じく『ラヴィ』と愛称で呼んだ。
しかも、公子様からも名前呼びを許された。
万歳!普通に嬉しいんですけど……!



