秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


ファビオ、また不敬を!と、ひやひやしている時に、急に矛先がこっちに向くものだから、慌てて思わず変な声が出てしまった。

「そ、それはその……」

働かなくていいと言われてるのに、働いている。その言い訳を頭の中で探していると、しどろもどろとなり言葉が出てこなかった。

「君は働かなくていいと言われてるのに。父上が知ったら大騒ぎだ」

「す、すみません!」

「ほら、ワンピースの裾も汚れてるし」

「あ、その、すみませんっ!」

ひとつひとつ注意されては、反射的にペコペコと頭を下げてしまった。

注意されるのも仕方ない。この数ヶ月、散々『働かなくていい』と言われながらも、ついついお手伝いをしてしまっていて、公爵様らの意見を無視したカタチとなっている。

仰せの通りにしない居候に呆れているだろう。

私もわかっちゃいるなら止めればいいのに。今更遅い。

後悔して俯いたままでいるのは……他の誰でもなく、公子様にこうして直接注意されたからなのか。

「ラヴェンダー嬢、ミモザに声をかけておこう。着替えておいで」

「はい……」

不快にさせただろうと思っていたが…顔を上げたそこには、私を見て爽やかに笑う、彼の笑顔があったのだ。