あわわわ!まずい、いったいどこから聞かれていたのだろう。
男色疑惑はともかく、私が見惚れていたとかなんとかの部分を耳にされていたら非常に困る。
内心ドキドキと胸を詰まらせて様子を見ていたが、ファビオは何の悪怯れもなく、いつもの調子で公子様に頭を下げていた。
「おぉー、公子様おかえりなさいませ!本日も麗しゅう!」
「こら。人の陰口叩いてしれっとしてるんじゃない」
「えぇー?陰口かなぁ?わははは」
笑って誤魔化すファビオに、アルフォード公子様は「まったく……」と、少々呆れ気味だ。
二人のやり取りを見ている私はひやひや。
ファビオの不敬も厭わない、お調子者そのものな発言と態度にも。
公子様がその点について何も言わないのは、ファビオの為人をわかっているのか、懐が深いのか。
「取り敢えず、自分の名誉のために。俺は男色ではない、と断固反論させてもらうよ」
「ほぉ、そうですか。承知致しました!早く婚約者をお作りなさい!」
「どさくさ紛れにすごいこと言ったね、ファビオ。……と、ラヴェンダー嬢?また庭師のお手伝いしていたの?」
「へっ?はっ……」



