「おっ、公子様お帰りじゃん。……で、何?見惚れてんの?公子様、美男子だもなー?」
「ひっ、ひゃっ!」
不意に耳で囁かれ、体がビクッと跳ねた。
真横には、ファビオのニヤニヤとしたイタズラ小僧のような顔が。
「ちょ、ちょっ!見惚れてなんか……」
「なぁーに。そう否定するな、わかっとる。女子にとっては、あの美しさは目の保養になるもんな、うん。心奪われるのは、ようわかる。今のおまえさんみたいに、ポーッとな?うんうん」
見惚れてなんか……いたか。
でも、ズバリと見抜かれたのが恥ずかしくて、一人で勝手に話を進めてうんうんと頷いているファビオにムッとする。
「あの顔で、しかも次期公爵様でしょ。令嬢らがこぞってアピって次々と屋敷に押しかける。婚約者がいないのが不思議だなー」
「うん……」
確かに。ここに私が滞在してからでも、貴族の方々が令嬢である自分の娘をお連れしてアルフォード様に面会に来る姿を多々目撃している。
このお屋敷にいらっしゃる令嬢は、どのお方も段違いに美しく、綺麗な高位貴族の令嬢だ。



