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頭上の空は、私の心情とは裏腹で、雲ひとつない気持ち良いぐらいの快晴だった。

一夜明けて、お兄様が王都へと戻る。一人なので馬車は使わず馬に乗って帰るそうだ。

私らはお見送りのため、厩舎へと集まっていた。



「では、公爵。一晩お世話になりました」

「ああ。道中気を付けていけよ」



馬の準備をしているお兄様と公爵様の会話を黙って聞きながら立ち尽くす。

傍らには公爵夫人のサルビア様、アルフォード公子様もいた。



「ラヴィ、おまえは居候の身だ。労働は出来ないだろうから、せめて自分のことは自分でやれ。迷惑かけるなよ」

「……はい」

「労働?!あ、あほこのランティス!ラヴィは貴族令嬢だぞ!客人扱いするからな?!」

「神殿の者に身分は関係ありません。甘やかさないで下さい」

「たわけ!」

お兄様の言う通り、神殿内では貴族も平民も関係ない。

しかし、私は神殿を追い出された身なんですが。そう厳しい規律だけを押し付けてくるのが何ともお兄様らしい。

何の愛想のカケラもないお兄様。優しい言葉のひとつもくれないお兄様。