「ですが、あと2ヶ月もすればラヴィも16歳となり、神託を受けることが出来ます。公の気苦労も減りますよ」
「……おまえが言えたことか!」
血を分けた妹の不憫な処遇を他人事のように淡々と話す、この兄にも少しばかりの怒りを覚える。
もう少し、家族の情をかけてやってもいいんじゃねえのか?
……だが、兄も神殿の聖騎士団幹部という立場上、それは難しいのだろう。公爵領まで付き添っただけでも、十分か。
そんな中で、ふと頭が冷えて、気を取り直すかのように咳払いをする。
口を付けずにずっと手元で遊んでいたグラスを置いた。
「……なあ、ランティス」
「はい」
「何故……なぜ、ラヴィの【浄化】は、神託を受ける前に、覚醒してしまったのだろうか」
この娘は、貴族のしがらみにも神殿にも縛られないように、自分の進む道は自由に自分で決めさせる。
……かつて、娘の母親がそう断言していたことだ。
そうして、娘は母の面影を追って、神殿に仕える道を選んだ。
なのに……冤罪、カムフラージュとはいえ、神殿から追放という仕打ちはあまりにも酷ではないか。
その上、【秘匿されし聖女】であるなんて、自由もへったくれもない。



