「時に……ラヴィは、わかってるのか?自分の聖力のことも、自身がしでかしたことも」
気にはかかっていた。この屋敷に来た時のあの怯えた表情と、見るからにやつれた姿。相当思い詰めている様子では。
目の前の兄はしれっとした表情で、予想通りのセリフを吐く。
「いえ。ラヴィは一切わかっていません。この事件の真実も、自分が【秘匿されし聖女】の浄化の力を持つことも。……ラヴィは、自分が冤罪で大罪人となり、追放されてきたと信じて落ち込んでるでしょう」
「落ち込んでるでしょうって!……何故、教えてやらない!」
「ラヴィはまだ、神託を受ける16歳に達しておりません。なので、その内容を知ることが出来ません。それが神殿の規則です」
「神殿、頭硬っ!……神託受ける前に力が覚醒したという異常事態なんだぞ!」
「それでも規則は規則ですので」
「……」
なんて事だ。思った以上に、想像通りだ。神殿の頭の硬さにも困ったものだ。
神殿側の頑固さ故に、親友の可愛い娘が気に病んで涙してると思うと、憎らしくもある。
……ここでは、存分に甘やかしてやるしかない。
そう心に決めた公爵なのであった。



