【秘匿されし聖女】の存在は、神殿、王家のトップシークレットであり、それ以外の貴族らは知る由もない。

ましてや、【浄化】の力の存在を知識として頭にはなく、想像の範囲を超えていたのであろう。

『聖女見習いの誰かが、王太子の魅了を解いた。しかし、誰がどうやって魅了を解いたのかわからない』

という状態なのであろう。

だから、あの場にいた聖女見習いを全て狙うしかなかった。

……いっそのこと、まとめて手を掛けるしかなかったのだ。

そうでなければ、この状況に説明がつかない。それに、毒を使って葬ろうとするあたり、恐らくラヴィの【浄化】の力にも気付いていないだろう。



だが、そこを逆手に取り、大聖女と神官長は策を興じた。

何も気付いていないフリをして、ラヴィに毒殺の容疑をかけ、神殿から追放。

……と、見せかけて、ラヴィと縁が深く、また王家と神殿のトップシークレットを知るであろうルビネスタ公爵の下へと送り込んだ。

陰謀蠢く王都から、ラヴィを引き離すようなカタチとして。



「……ですが、魅了を解いた者が神殿にいると嗅ぎつかれている以上、ラヴィの正体があちらに知られるのは時間の問題かもしれません」