その時も、秘匿されし聖女といわれる能力を持つ【破魔】の聖女が戦線に立ち、魔獣の氾濫を鎮めたと記されている。



ーー邪悪に立ち向かう聖力を持つ聖女が、何故【秘匿されし聖女】というのか?

それは、聖力の質にあった。

魔獣の氾濫を鎮められるほどの聖なる力は、魔術師の魔力をも鎮めてしまう。魔術師にとっては、厄介なものである。過去に、実際に魔術師から狙われて危険な目にあった者がいたようだ。

他にも、この特異な力を私利私欲に独占して、魔獣の氾濫に備えることに遅れ、国が大損害を被ったことも歴史にあったとか。



特異な力は狙われやすい。

護らなくてはならない為、神殿側はこの『邪悪に立ち向かう力』を持つ聖女を表には出さずに、その存在を秘匿することとした。

だから、【秘匿されし聖女】。

秘匿されし聖女の神託を受けた者は、その力を公表されることはない。

その正体を隠しながら、日常に紛れて生きることとなる。その力を必要とする日が来るまで。

神殿は、護らなければならないのだ。天から授かったギフトを持つ者を。

これは、王家と神殿のトップシークレット。