対して、自分のツレである尊い御方ーー大聖女ユリ様は、表情ひとつ変えずにじっと彼女の成れの果ての姿を真剣に見つめていた。

「そうですか……ご苦労様です。行きましょうか、ファビオ」

「はーい」



【邪気】で王太子殿下や貴族令息を魅了し、神殿を襲撃して王都を騒がせた、絶世の美悪女が目を覚まし、面会が出来るというので、誰よりも大切な恩人・大聖女ユリ様に連れられて、王宮魔術師団の研究塔へと赴いたが。

ありゃあ、面会ではないな。動物園の珍獣を見に行ったようなもんだ。あれが面会とはどういう神経をしとる、魔術師団。

彼女の言い分も聞いてはみたかったが、あれは当分、いや一生無理だろう。

恐らく彼女は自我崩壊したまま、あのジメジメとした独房で『邪気に侵された危険人物』として、一生を暮らすのだ。

それだけ【秘匿されし聖女】の力は絶大だということだ。



「戻ってお茶にしましょうか」

「はーい」

「ファビオ、今回は大変よくやってくれました。貴方の陰で動いた功績が王族を、国を救いました。お疲れ様です」

「……俺の方こそ。ユリ様があの時、俺の戯言を信じてくれたから、ここまでやってこれたんだよ?ホントありがとう」