秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


……なるほど。ローズマリー令嬢の騙る物語では、攻略対象、王太子様やアルフォード様らと神殿に乗り込んで悪の大聖女様を倒すという筋書きなのか。

だが、王太子様らの【魅了】は私が解呪してしまった。なので、一緒に神殿に乗り込んでくれる人がいなくなり、他の人を連れて来たということ。

だけど、人数多くないだろうか。見回しただけでもざっと十数人はいる。連れてき過ぎだ。

何が何でもカタチだけでも強制的に筋書き通りにしようという、ローズマリー令嬢の執念が見える。

……と、考察している場合ではなかった。



【魅了】の術中にあると思われる男性らは、おぼつかない足取りでゾロゾロと向かうその先は、瓦礫の前で倒れている大聖女様の方だった。

彼らは、大聖女様を狙っているのだ。

……いけない、大聖女様が危ない!

「やめて!近寄らないで!」

再び駆け寄っては、大聖女様を背に庇って叫び掛ける。

だが、私の呼び掛けに反応する者は誰もいない。聞こえていないのだ。

みんな虚ながらも血走ったような目をしていて、私らに向ける視線には敵意が込められていた。