秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


「悪が蔓延るなんて許せないわ!私はこの【女神】の力で、この国を護る!」



と、一層張り上げた声で、ローズマリー令嬢は言い放つ。

そして「決め台詞、言ったわ……!」とも、小声で満足気に呟いていた。

ここで言うぞと決めていたものなのか。

だが、こちらとしては冗談ではない。悪者と見做され、言われもなきことで危害を加えられるなど。



「それは【女神】の力ではありませんよ、ローズマリー嬢!紛れもなく【邪気】です!これ以上【邪気】を振るうのはおよし下さい!」

大聖女様がそう呼び掛けている間にも、ローズマリー令嬢の赤く畝った風渦の【邪気】は、再びこちらに襲い掛かる。

今度は、大聖女様が【聖力】が込められた自らの杖を取り、【邪気】を薙ぎ払った。

だが、ローズマリー令嬢の【邪気】の量が膨大過ぎて払いきれず、大聖女様は【邪気】に当たり吹っ飛ばされてしまう。

その身は瓦礫の山へと打ち付けられた。

「……ああっ、大聖女様!」

また、大聖女様が!……何で大聖女様ばかりを狙うの!お年を召した御方に、何でここまで酷いことを!

倒れた大聖女様のもとへ、慌てて駆け寄ろうとしたのだが……そこで、思わず足を停めてしまう光景となっていた。