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遠路はるばるお越し頂いた亡き親友の子らを、領地の屋敷に迎え入れ、晩餐でもてなし再会を喜んだ。

若い者は先に席を外し、お酒も登場して大人らで晩酌は続く。

夜も深くなった頃、自身の妻が退席すると同時に、場所を自身の執務室へと移動した。

……目の前のこの男。亡き親友の長子であり、神殿の騎士団『聖騎士団』の現副団長であるこの男と密談をする為である。




完全に二人きりとなったところで、机の上に置いてあった魔道具を発動させ、防音を施す。

貴族なら誰でも使用しているポピュラーな魔道具だ。




「……よし、もういいぞ。話そうか」

「ご配慮ありがとうございます」



配慮もなんも、たかが密談の防音に礼を言ってくれるな。

だって、これから話すことは、国家を揺るがしかけたレベルの話だというに。家族にだって聞かれてしまうには、都合の悪い話だ。

そんなことを思いながら、亡き親友の後を継いだその息子であるランティス・タンザナイト伯爵に、お手製のウィスキーの水割りが入ったグラスを差し出す。

「ありがとうございます」

またしても堅苦しい礼をする仏頂面の男と、音を鳴らしてグラスを合わせた。