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『ーーねぇ、【秘匿されし聖女】って何?』




儀式の間に突然乗り込んで姿を現したのは、あのローズマリー令嬢だった。

あの赤いてんとう虫ーー邪気を辺りに漂わせながら、私らの方へと歩みを進めてくる。

私を腕の中に庇い、大聖女様が彼女と対峙するのであった。



「この神聖なる儀式、神託の儀の最中に、無断で入室なさるなんて……!」

「神託の儀?それ、何?」

「……!」



この国の常識をあっさり『それ何?』と返されて、呆気に取られそうになる。

この国の貴族令嬢ともあろう者が、神託の儀を『それ何?』って、この人は貴族令嬢としての最低限の知識や矜持は皆無なのだろうか。

首をこてんと傾げるローズマリー令嬢に、訝しげな視線を送る。



「で、【秘匿されし聖女】って、何?」

「貴女には関係のないことです」



大聖女様がはっきりとそう答えた瞬間。

顔を歪めたローズマリー令嬢、それを取り巻くてんとう虫、【邪気】がカッと一斉に強く発光した。

視界を奪うほどの強い光だ。

同時に、ガクンと揺れて、足元が音と共にガラガラと崩れていくようだ。建物がガラガラと崩れる音もする。

体を震わす程の大きな音に、耳が壊れそうだ。