そのセリフで、忘れかけていた大事なことを今思い出した。

必死で何日も馬で駆けていたため、日にちの感覚がおかしくなっていたようだ。



『神託』の儀。聖力を持つ者が16歳となったその日。精霊王からの神託を受ける、成人の儀。

今日、だったのか……。



思うところはある。複雑だ。

……もし、こんなことが起こらなければ、俺たちは今頃、公爵領で今日という日を迎えていた。

16歳になるラヴィのために、ラベンダー畑の古ぼけた四阿を改装し、そこでラヴィと仲良くしている使用人らも呼んで、ささやかにお祝いをしてあげようと思ったのだ。

幸せになるはずの日だったのに。

夜会にて自分がローズに翻弄されてしまったがばかりに、このような状況にまで発展してしまったのだ。

自分自身が恨めしい。



「……アル、そんなに自分を責めるな」



エリシオンに声をかけられたところで、頭を抱えていた自分に気付く。

「……エリシオン」

「こうなってしまったのは、精霊王の思し召しなのかもしれない。決着をつける時がきたのだ。ローズと向き合うことと……俺たちが犯した罪にも」