秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


立っていられなくて膝が床に着きそうになったところを、制止させられる。

目の前には、あの時と変わらない強さの中に優しさを見せるアゼリアの眼差しが。



「もういいのですよ、本当に。その気持ちだけで十分です。貴殿らの病的すぎる異変には気付いてましたし、謝罪は他の方々から飽きるほど頂きましたから」

「でも……俺は君に」

「それに、剣先を突き付けられるなど、あのぐらいで怯んでいては未来の国母など務まりませんわ?」

そんな言葉を投げ掛けるアゼリアは、得意気な表情を見せる。持ち前の気の強さも現れていて、ああ、アゼリアは昔からこういう女性だったな、なんて思い返すと同時に安堵した。

アゼリアは、昔からの付き合いである自分を信じてくれていたのかなんて。

だからといって、自分のしたことは許されるわけではないけれど。

「申し訳ないと本気でお思いなら、今後の態度で示して下さいね?」

「……ああ」

「それに、本っ当にもう土下座はたくさんなのですよ」

そう言って、エリシオンを寒々とした目つきで一瞥するが……何かあったのだろうか。