すると、小声で耳打ちされる。

「ルビネスタ公子ともあろう者が、そんなボロボロで異臭を放っていたら、変に勘繰られるぞ。貴族として身だしなみぐらい整えてこい」

え?異臭?そんなに?

いや、無理もないか。ここ数日間、ただひたすら考え事をしながら馬に乗っていた以外は、何もしてない。睡眠も食事も。

異臭、そんなにするのか?

……だなんていう指摘をされて戸惑っていたその時。

向こうの方角から足音、そして気配と共に現れた。

「アル?……アルなのね?!」

それは、今回最も謝罪をしなくてはならない相手で。

いや、謝っても許されることではない。

「アゼリア……!」



ーーあの時の光景が、蘇る。

アゼリアの細く軽い身体を突き飛ばした感触と、地に転がる姿。

怒りに任せて刃を突きつけられているにも関わらず、怯まずに向けられる、強い眼差し。

途端に罪悪感が腹の底から込み上げてきて、意識が囚われそうになり頭を抱える。



「すまない……すまない、アゼリアっ!俺は何てことを……!」

「もういいのです、アル!土下座はもうたくさん!」