門番が自分の顔を覚えていたようで、ルビネスタ公爵令息だと身分は認知され、中には入れてもらえた。

応接室へと案内されるその最中、俺の前に駆け足で現れたのは、昔と変わらない幼馴染の姿だった。

「エリシオン……!」

「アル!ここに来たってことは、おまえももう……」

その言葉に、深く頷く。

「ああ、悪夢から醒めたよ」

「そうか……」

今思えば、あれは悪夢だ。

一人の令嬢を複数で囲い、何の違和感も持たないなんて。

俺はともかく、このエリシオンや他の令息には婚約者もいたっていうのに。

……けど、その張本人であるローズを憎みきれないのは、何故か。



「エリシオン、俺がここに来たのは聞きたいことが……」

「その前にアル。おまえ、最後に湯浴みをしたのはいつだ?食事は?随分とボロボロになっているじゃないか」

「……」

「早馬並みに駆けてきたのか?おまえほどの乗馬技術なら出来るかもしれないが……まずは湯浴みと食事を用意する」

「そ、そんな悠長なことを言ってられない!俺は……!」

「今の自分の姿、鏡で見たか?」

「えっ」