ローズはとても素敵な女性だ。惹かれていた時期もあったかもしれない。
だけど……今逢いたいのは、彼女ではない。
(ラヴィ……)
前を向いたら、上を向き先を見る。
そこに光るものを共に見たいと思うのも、陽が昇ったら未来の話をしたいと思うのも、ローズではない。ラヴィだ。
ローズが【魅了】を使って何をしたかったのか、気にならないわけではないが、そんな事情よりも今優先したいことは、ラヴィに会うこと、ラヴィの身の安全だ。
今ここでラヴィを失うことになろうともあれば、どの何よりも後悔するに違いない。
だから、ラヴィ。
一刻も早く、君の傍に行く。
隣を歩く資格を得られるよう、日々励みたい。
そして、この一件が片付いたら……君と未来の話がしたい。
『ラベンダー畑で、待っていて下さいね……』
……俺は一人で呑気に、ラベンダー畑で君のことを待ってる場合じゃないんだ。
早馬の如く、ただひたすら馬を駆けさせる。
今までの悔恨、ラヴィのことを頭の中で繰り返し巡らせながら。
もう、何度も陽が沈んでは昇って、最後に寝たのはいつか、食事をしたのはいつか覚えていないほど。
そんな日々を繰り返しているうちに……王都に到着した。



