一刻も早く、王都へ。

ラヴィのもとへ。



その一心で馬を走らせていたが、頭の中にちらついてくることが、もうひとつ。

この騒動の原因となっている、学園の同級生のことだった。



(ローズ……)



ローズこと、ローズマリー・トルコバス侯爵令嬢は学園の同級生で、最終学年の始まりと共に編入してきた令嬢だった。

公にはされていないが、ローズはトルコバス侯爵の婚外子。どうやら侯爵が外で作った子のようで、侯爵家の所属魔術師がローズを見つけ、侯爵家に招かれるまでは市井で暮らしていたという。

そのせいか、扇子で顔を隠して表情を見せず駆け引きをする一般の貴族令嬢とは違って、喜怒哀楽の表現が素直。振る舞いは無邪気でのびのびとしており、まるで平民のよう。人との距離も近くて、ヒヤヒヤさせられることも。

マナーがなっていないと、令嬢らは陰で苦言を漏らしていたようだが、俺たちにとってはそこがまた新鮮に映った。

同じ素直でも、新鮮であっても……ラヴィとは違う。ラヴィは、感情表現も距離感も節度を持っている。

今になってみれば、貴族令嬢にはあるまじきローズの振る舞いに何故違和感を持っていなかったのか、不思議に思う。