成人前のラヴィが何故聖力を使えるのか、神託前なのに何故【秘匿されし聖女】だと発覚したのかの疑問はさておき、こうしてはいられないと衝動に駆られた。

「邸とラヴィ自身の警護の強化をしなくては……ラヴィはどうしてますか」

「ラヴィはもうここにはいねえよ」

「……え?」

「昨晩、おまえが寝てる間にここを発った」

「は……」

その言葉に、耳を疑った。

彼女がここにいない、そんな未来を想像すらしたことがなかったからだ。

「ラヴィがいない?何故ですか!いったい何が……」

「おまえの【魅了】解呪の瞬間をピンク頭に見られた。王太子のあの現場に居合わせた聖女見習いだという認識もされた。あのピンク頭の都合が悪い邪魔をしているのがラヴィだと、流石にあのお花畑頭でも理解しただろう。……今度はラヴィが狙われるかもしれない。だから、警護強化の意味で王都に帰した。元々、王太子からもピンク頭が乗り込んできたらラヴィを王都に戻せと言われてたしなぁ……どうにかして逃れようと考えてはいたが」

「……」

父の話を、半ば放心状態で黙って聞いていた。

ラヴィが、もういない……?