その現場と状況、とは。【魅了】の衝動で王太子……エリシオンが、婚約者のアゼリアに婚約破棄を突き付けるという名目の茶会で、アゼリアと懇意にしている神殿の聖女見習いたちが押しかけてきた。

その中にいたのがラヴィで、エリシオンは彼女に触れられた途端、何故か急に正気に戻った。

ローズを自分の妃にすると豪語していた、あれだけ過激だった恋情も綺麗さっぱりと無くして。

その現場を間近で目撃し、状況を瞬時に悟って判断したのがアゼリアで、『ラヴィが触れると【魅了】が解ける』という推測論のもと、同じく【魅了】に囚われていた学友らを忌まわしき呪いから解放していったという。アゼリアの行動力が功を奏した、一連の騒動。

……俺が、領地に軟禁されている間に、王都ではそんな出来事が起こっていたなんて。



そして、何故ラヴィがこのルビネスタ公爵領に来ることになったのか。その経緯も明かされ、想像を遥かに超えた展開にただ驚くしかなかった。

「神殿で毒殺騒ぎ?!……何故、そのような!」

聖女らの安寧を護る、神殿の強固な警備を潜り抜けて、毒殺騒動が起こるなど前代未聞のことだ。

狙われたのは聖女見習いの6名だが……エリシオンの【魅了】を解いたと思われる誰かーーラヴィを狙っての犯行だった。