「……父上、【魅了】が解けたと仰いましたよね」
「ああ」
「その、【魅了】は何故解けたのですか」
……ローズが夜会に現れたのは、覚えている。
ローズに触れられた途端、制御の出来ない激情が溢れ出し、共に寄り添っていたことも。
学園にいた、あの時のように。
父の言った通り、バルコニーにもいたし休憩室にも入ろうとした。
……だが、そこからの記憶がない。
俺の質問を耳にして、父は大きくため息をついた。
そして、口にしたこととは……予想もつかなかったことであった。
「ラヴィだよ」
「……えっ」
「ラヴィがおまえに掛けられた【魅了】を解いた。……いや、おまえだけじゃない。王太子やおまえの学友たちの【魅了】も。全部、ラヴィだ」
「ラヴィが、どうして……?」
ーーそうして、父の口から全ての経緯か明かされる。
学園にいた時の自分の行動は、どう見ても病的で【魅了】への疑惑が拭えなかったこと。
だが、自分が領地に強制連行され、父やガーネット公爵が動きだそうとしたその矢先、予想だにしない事が起こった。
突然、王太子殿下が正気に戻ったのだ。



