何を、したのか……。今も、今までも。





「やっと起きたか、このヤロー」



乱暴にドアが開いたと思ったら、実父が現れてズカズカとこっちにやってくる。

眉間にシワを寄せて、とても不機嫌そうに。

脳内の混乱の最中、その姿を茫然と見つめるしかしなかった。

ベッドサイドで立ち止まる父は、見下ろして様子を窺う。



「気分はどうだ?」

「……」

「何が起こったか、自分はどうしたかわかるか?ってんだ」 

「……」

何をどう、答えれば。

だが、そう迷ってる間にも、父は息を吸っては怒号と共に吐き出した。

「夜会に脳内お花畑ピンク頭女が乗り込んできて、おまえも一緒になってイチャイチャしていて、バルコニーでキスして、調子に乗って休憩室に行こうとしたのを、覚えてるかってんだ!」

「……」

「何?無抵抗か?……うーん。あの侯爵令嬢を『脳内お花畑ピンク頭女』と罵って、おまえが逆ギレしなくなったということは、【魅了】は解けたということか?王都から連れ戻した当時、同じことを言ったら『ローズを悪く言うなぁぁ!』って、怒ってたもんな?……何だ。ようやく目が覚めたか」