「聖女らの祈りも届かぬぐらい、邪悪なる気が世界を恐慌に陥れるその時。秘匿されし聖女が、己の力を以って邪悪を滅ぼす。ーー恐らく今がその時なのだと思います、ラヴィ」

「今が、その時……?」

「ええ。邪悪なる気が、世界に蔓延り恐慌に陥れられているのが、正に今なのだと思われます。だから、貴女の力を神託よりも早く覚醒せざるを得なかったのでしょう。……あくまでも推測の域ですが」

「……」

邪悪なる気ーー邪気が今。この国に、世界に蔓延っている?

(今……なの?)

頭の中で、その心当たりを探している。だけど、何がどれだか思いつかなくて。

「だって、スタンピードの兆候は見られないし、邪気による土壌、水質汚染も……」

「邪気が害を及ぼすのは、それだけではありませんよ、ラヴィ。貴女もその目で見たのではありませんか?」

「はっ……!」



私が目にした【邪気】ーーとは。



《ローズ、落ち着いて。落ちつ…………あぁっ、ローズ!なんて可哀想に!君に涙を流させるなんて、万死に値する行いだというに……!》

《俺の女神を傷つける醜女よ。この正義の刃で切り刻んでくれる……!》



突然、変わった彼の顔。