二人のやり取りを見て、苦笑いをしていたが。
……これから起こることが想像できないぐらい、誕生日の朝はのんびりほのぼのしていた。
そして、とうとう。馬車に乗り込み、長旅を共にした暗部御一行の皆様と、神殿へ向かう。
その道なりは見慣れた光景だ。王都に戻ってきたんだと、改めて感じる。
と、同時に胸の奥には緊張が込み上げてきて、胸焼けがしそう。
そう口にすると、「操られていた時の公子様の発言より胸焼けしますか?」と、質問されて思わずブッと吹き出してしまった。
それ、本人には言わないであげてね……。
でも、失笑を誘われて、いくらか緊張がほぐれた。
そんなやり取りをしているうちに、とうとう。神殿に到着してしまったのである。
馬車の窓から、神殿を見上げる。
二ヶ月前まで、私が暮らしていた神殿。追い出されてしまった神殿。
また、戻ってくることになるとは……思わなかった。
大聖女様の一芝居とはいえ……軟禁され、ドア越しに糾弾され、悲しかった。何が起こってるのかわからなくて不安になった。
あの辛かった記憶が蘇っては、辛くなる。
でも、もう……逃げることはしない。



