「神殿?」
「明日は何の日かしら?」
マーガレットお姐さまからの質問で首を傾げるその前に、ハッと気付く。
そうだ、明日という日は。
「私が……16歳になる日、です」
「そうね」
16歳になる日、この国では大きな意味を持つ。国民一人一人の転換期の日ともいえる。
成人となり、一人前の大人として認められる日。貴族は社交デビューを果たし、聖力を持つ者は神殿で神託を受け、その力の如何程を知ることができる日だ。
「明日、でしたか……」
夜会の夜から今日まで目まぐるしい日々が続いていたので、日にちの感覚を失っていた。
まさか、明日に迫っていたとは。
誕生日が明日。……もし、夜会にローズマリー令嬢が現れなければ、アルフォード様があんなことにならなければ。
《どうして?誕生日は祝うべき喜ばしい記念日じゃないか》
私は公爵領で、想い慕う人にささやかにお祝いされて、きっと最高の日を迎えていただろうに。
思うことは、たくさんある。
悔やまれる思いが溢れてきたが、それは首を横に張って払い除けた。
……それは、違う。



