秘匿されし聖女が、邪に牙を剥ける時〜神殿を追放された聖女は、乙女ゲームの横行を許さない


【邪気】をも孕む、禁忌の術【魅了】。

そもそも【邪気】を使用するから、魔術師でさえ扱うのは困難と言われているのに。

そんなものを使用してまで成し得ようとするのは、何故か。

ローズマリー令嬢の目的はまだわからない。



「トルコバス侯爵近辺の調査も済ませ、後は侯爵本人を追及するのみ。明後日、親子揃って王宮に呼んである。父上の前で追及しようと考えているが……さて、どんな返答が返ってくるか」

「ビビってしらばっくれるんじゃないんすかぁー?」

「逃げられない程の証拠は取り揃えているつもりだ。ルビネスタ公爵が間に合うといいが」

「ルビネスタ公も、タンザナイト伯爵令嬢らより一日遅れてルビネスタを出立していると報告が来ているよ。明日の夕暮れ時には到着するのでは」

話の流れからか、王太子様、ファビオに加えてガーネット公爵も交えて話し合いが始まっていた。

横で内容を黙って聞いていたのだが……「ラヴィ」と、肩を叩いてきたのは、隣に座っていた神殿の筆頭聖女であるマーガレット姐様だった。



「姐さま?」

「……ラヴィ。あなたは明日、神殿に来るのよ?」