「……まさか、神殿内にまで手が及び、聖女見習いたちに手を出すとは思わなかったの。こっちの誤算ね」

そう言って、アゼリア様が俯く。悔やんでいる表情だ。

「向こうが貴女の存在に気付いてしまう前に、どうしても貴女をルビネスタに行かせたかった。貴女を守る為に……アルフォードの為にも」



そうして、アゼリア様は話し出す。



「ラヴィが【魅了】を解く力を持っていると気付いたのは、私なの。……貴女たちが王宮の私たちの面会の場にやってきた、あの時。貴女に触れられたエリシオン様の様子が、顔が変わった。……この事態。救ってくれるのは、ラヴィ。貴女しかいない。そう思って……貴女を利用するカタチになって、ごめんなさい」

「そんな、アゼリア様、謝らないで下さい……」

私もわかっている。神託を待たずに覚醒した、この奇妙な私の力。

私は無自覚だったけど、これで王太子様らが正気に戻り、アゼリア様の救いになったのなら、別に良いのだ。

私に説明が無かったとか、私を一時的に苦しめたとかは、いろいろ事情があったのだから、もう良い。

この奇妙な力で、アゼリア様が笑顔になったのなら。



……それから、私はアゼリア様や王太子様から、今までの経過の話を聞かされることとなった。